2005.3.10
吾妻ひでお『失踪日記』を買って読む
吾妻氏の本は『不条理日記』しか読んだことがなかったのだけれども、たけくまメモの記事を目にして興味が湧いたので購入することに。近所の某書店では売り切れていたようだが、サブカル(笑)な人が好むらしい別の書店には山と積まれていた。
以下感想文。描かれているエピソードは失踪→ホームレス生活、復帰後アル中になって常時手が震える、幻覚が見える、強制入院……と悲惨で仕方がないのに、読者の気持ちは暗澹とすることがない。楽しく、のんびりと、ツルツルと読んでいけるのである。
巻末の対談でとり・みき氏が触れているように、まずコマ割が特徴的。一つのページはタテ四段に分割され、ページあたり十数コマが詰め込まれている。それゆえひとつのコマの大きさが全体を通じて小さい。作中最も大きなコマは表紙にも使われている「目覚めたら雪が積もっていた」場面であろうが、それにしてもページの 1/2 の大きさのものだ。これによって、時間の経過が体感的にも、表現的にも極めて速い。加え、人物の「アップ」描写が非常に少ない。大抵のコマに人の全身が入っている(とり・みき氏の指摘するところである)。これらの効果によって、読者を過度に陰鬱な世界に引きずり込むことがない。淡々としたポジティブ
な目線がこれによって実現されているのだ。やっぱり、表現というのは抑えて、削ってナンボなのだと痛感する。最近山本夏彦の本をチマチマ読んだりしているが、文語文や漢文についての文章でも似たようなことが言われていたと思う。
吾妻氏、「2ちゃんねるぷらす」で今は連載もってるんだね。本書中のある場所に存在するインタビュー記事でそのことに触れ、「ギコ猫」とか「モナー」、「電車男」などという単語が氏の口から出てくるあたりが何ともアレな感じたっぷりだ。
関係ない話だが、ここのところ森下裕美の漫画を収集中。ほのぼのして見える絵柄に潜む、とんでもない底意地の悪さがたまらない。「少年アシベ」なんてゴールデンタイムのアニメになっているが、原作は子供に見せるには切れすぎだろう。
21:06 | 書架 | Comment (0) | TrackBack (0)
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